プロジェクトのポイントその2:BDF & SVOのハイブリッド
本プロジェクトの第2のポイントとしては、バイオディーゼル燃料(BDF)だけじゃなく、廃天ぷら油そのものでも走る車、発電できる車を作る、ということです。
廃天ぷら油だけでエンジンを動かすのは「ストレートベジタブル(SVO・WVO)」や「ニート(neat)」方式と呼ばれています。
一部のディーゼルエンジンは、植物油だけでも動きます(相応のデメリットもありますがこれは後述します)。
BDFは廃天ぷら油にメタノールや触媒を加えて反応させ、それを精製して作ります。現在市場で手に入る普通のメタノールは石炭・天然ガス等から作られています。つまり、BDFは100%バイオマス由来というわけではありません(もちろんそれでも軽油そのものを使うよりはCO2発生や化石燃料の消費をずっと抑えることができます)。
また、BDFの反応過程では必ず副産物であるグリセリンがでてきます。BDF精製に水を使用する場合は、セッケン分やアルカリ、その他を含む排水も出ます。これらは適切に処理しなければなりません。
さらにBDFの合成反応や精製、蒸留などで加熱・撹拌・減圧等を繰り返す場合、必ずなんらかのエネルギーを外部から加える必要があります。それが電気にしろ、ガスにしろ、BDFを作るのに他の化石燃料を使うことになります。
以上のような問題は、廃天ぷら油でそのままエンジンを動かすこと(SVO化)ができれば、全て解決することができます。
ただし、SVO化が可能なエンジンはかなり限られているようです。例えば、コモンレールなどの新型ディーゼルは全て不可、旧式のディーゼルエンジンでも、構造が比較的シンプルでシリンダヘッド等の構造が堅牢にできているもの、という条件があります。また、廃天ぷら油は流動性がBDFや軽油よりも劣るので、なんらかの方法で燃料(天ぷら油)を予熱してから燃料ポンプに導く必要があります。さらにエンジンが冷え切ったコールドスタート時には、まず軽油やBDFを使ってエンジンを始動させ、ある程度エンジンが温まってから燃料ラインを天ぷら油に切り替えて使うなどの工夫(燃料ライン・タンク等の改造)が必要です。
最終的に以上の点を注意・工夫しても問題なくSVOでエンジンが動き続けるかどうかはかなり「経験」によるところが大きいようです。
なので、本プロジェクトでは、SVO化の成功例が報告されている車をベース車両とし、SVO・BDFのハイブリッドで動く「バイオカー」を作ることにしました。
米国カルフォルニアにある「Lovecraft」という会社では、ディーゼル車をSVOで走れるようにするキットなどを販売していますが、その中でお勧め車種として挙がっているのが以下の3台です。
- Mercedes Benz 300SD, 1981-1985
- Volkswagen Jetta TDI, 1996-2006
- Ford F250 Diesel, 1995-2000
実は、このリスト自体はつい最近知ったのですが、色々なめぐりあわせで、メルセデス ベンツ300SD(W126)をベース車両に使うことは決まっていました。
上記のリストの中でもベンツ300SDはもっとも安くSVO化できる車種となっており、「ルノー松山」で写真のベンツと(社長の森さんに)出会えたのは、このプロジェクトをはじめるにあたって本当に幸運な出会いでした(この辺の詳しいお話はまたいずれ)。
また、本プロジェクトでは、上記のLovecraftのキットを使うわけではありませんが、こういうキットを販売する会社があること自体、アメリカ人のDIY(Do It Yourself)根性を表しているように思います。
我々も負けてはいられません。森さんご提案の‘ちょっと面白いパーツ’をとある車から‘リサイクル’して、ベンツのSVO化を進めて行く予定です。
パーツの写真をあげておきますので、何なのか想像してみてくださいね。
※画像をクリックすることで拡大画像を見ることができます。
投稿日 : 2010/10/08 | カテゴリー : プロジェクト内容 |